駿河シカヲです。
今回はハワード・ホークス「三つ数えろ」です。
これは、実はすごい映画でありました。
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<作品解説・詳細>
三つ数えろ(1946) - goo 映画
「紳士は金髪がお好き(1953)」のハワード・ホークスが1946年に製作・監督に当った推理映画で、「深夜の告白」のレイモンド・チャンドラーの処女作を「脱出(1944)」のウィリアム・フォークナー、リー・ブラケット、「北京超特急」のジュールス・ファースマンが脚色した。撮影は「暴力に挑む男」のシド・ヒコックス、音楽は「欲望の谷」のマックス・スタイナー。「裸足の伯爵夫人」のハンフリー・ボガート、「百万長者と結婚する方法」のローレン・バコール、「腰抜けM・P」のジョン・リッジリー、「地獄から来た男」のマーサ・ヴィッカーズ、「殺人者はバッジをつけていた」のドロシー・マローン、「銅の谷」のペギー・ヌードセン、レジス・トゥーミーらが出演する。
※ストーリーの結末が書かれているので注意!
私立探偵フィリップ・マーロー(ハンフリー・ボガート)は両肢不随の老将軍の妹娘で抑欝症気味のカーメン(マーサ・ヴィッカーズ)が古本屋アーサー・ガイガーから恐喝状をつきつけられたことについて調査依頼をうけた。将軍は同時に姉娘ヴィヴィアン(ローレン・バコール)の夫リーガンが行方不明になったことも心配していた。ガイガー家を探りに行ったマーローはあられもない格好でガイガーの死体の傍らに佇むカーメンを発見し、家へ送りかえした。彼女はここで秘密写真を撮られていた。翌日彼は地方検事局のバーニー・オールズから、将軍家の自動車が暴走して前にカーメンと駈け落ちしかけたことのある運転手テイラーが死んだニューズを知らされた。ヴィヴィアンはマーローの事務所を訪れるうち彼に恋心を抱くようになった。マーローは恐喝の張本人がいかさまギャングのジョーであることをつきとめたが、ジョーは彼をガイガー殺しの犯人と思いこんでいるガイガーの身内に殺された。しかし真犯人は死んだテイラーであった。リーガンと関係のあったモナという女の夫で暗黒街の大物エディ・マースがリーガン事件に関係あると睨んだマーローは、リーガンの仲間ハリーに当たって見ようとしたが、一足おそくハリーはエディの手下カニノに毒殺された。マーローはカニノの後を追ったが、計略にかかって捕えられ、危いところを居合せたヴィヴィアンに救われた。ガイガーの家に行ったマーローは電話でエディを呼びつけ、彼からリーガンがカーメンに殺された事実を聞き出した。ガイガーの家を取り囲んだエディの手下たちはマーローの策にかかって誤って発砲し親分エディを殺してしまった。マーローは検事局のバーニーにリーガン殺しはエディであったと告げた。
とにかく、まず観終えた人のほとんどが思うだろう。
結局、運転手(テーラー)を殺したのは誰だったの?と。
しかし、気にするなかれ。
制作陣も誰が運転手を殺したのか分からないのである。
しかも、原作(大いなる眠り)を書いたレイモンド・チャンドラー氏ですら、運転手殺しの犯人を知らないのだ。
作っているほうが分からないのだから、僕らに分かるはずがないのだ。
しばらくして、とんでもないことに気づく。
とんでもないというのは、あくまでもぼくにとってとんでもないことなのであるが。
実はこれ、主人公である探偵のマーロウ(ハンフリー・ボガート)の出ていないシーンがないのだ。
ということは、これはすべてマーロウの一人称で語られる映画なのである。
だから、マーロウが見ていること、聞いたこと以外は映画の中で語られていないわけである。
と、いうことは。
ここからが更に大事なのだが、
マーロウに興味のないことは、どうでも良いことなのである。
彼の興味はエディ・マースと、ヴィヴィアン(ローレン・バコール)にあるわけで、
運転手殺しの犯人などは最終的に自分と関係のないことだから、興味が無かったのだ。
だから、運転手殺しの犯人が明かされないまま、映画が終わるのだ。
ぼくはそう思う。
この、主役目線でしか語られないという制約が非常に面白い。
マーロウがエディをピストルで撃った時のシーンはそれが見事なアクションシーンに結実している。
詳しくいうと、こんな感じ。
マーロウがドアに向かって二三発、発砲する。
ドアの向こうにはエディがいて、エディは撃たれたわけだが、それは画面には映らない。
なぜなら、撃たれたエディがマーロウには見えていないからだ。
それで、即死したエディがドアに身を預け、ドアがこちら側に開く。
それで、マーロウがエディを見事に撃ち抜いたことを、マーロウとともに観客は知る。
という具合。
「自分は映画を語るだけ」と言ったホークスは、職人的な監督である。
素晴らしいと思う。
映画は、ストーリーをどう語るかである。
それはストーリーそのものよりはるかに大事なことだ。
いかに語るか。
ホークスは、「大いなる眠り」を主人公の一人称で語った。
この作品を観たとき、鋭敏に研ぎ澄まされたような印象をもったのは、そういうことだったのだ。
これはやられました。
素晴らしい。
★★★★★
夜中の12時から3時にかけて映画を観ることが多い。
近所を自転車で疾走している姿をよく目撃されている。
<マダム葵>
短期間でもの凄い本数の映画を観たりする。
夕方の花街でそそくさと歩く後姿を目撃されることがある。