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駿河シカヲとマダム葵による映画レビュー、書評、対談、コラム等のブログであります。 コメントやリンクはいつでも大歓迎でお待ちしております!
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2009.01.30,Fri

荒んでいます。駿河シカヲです。
わたくしの大好きな名匠・小津安二郎の『浮草』を観ました。
小津作品の中でも、いろんな意味で異色といえます。

<作品概要>
浮草(1959) - goo 映画
「お早よう」のコンビ野田高梧と小津安二郎の共同脚本を小津安二郎が監督したもので、ドサ廻り一座の浮草稼業ぶりを描いたもの。撮影は「鍵(1959)」の宮川一夫が担当した。

<あらすじ>※ストーリーの結末が記載されているのでご注意ください。
志摩半島の西南端にある小さな港町。そこの相生座に何年ぶりかで嵐駒十郎一座がかかった。座長の駒十郎を筆頭に、すみ子、加代、吉之助など総勢十五人、知多半島一帯を廻って来た一座だ。駒十郎とすみ子の仲は一座の誰もが知っていた。だがこの土地には、駒十郎が三十代の頃に子供まで生ませたお芳が移り住んで、駒十郎を待っていた。その子・清は郵便局に勤めていた。お芳は清に、駒十郎は伯父だと言い聞かせていた。駒十郎は、清を相手に釣に出たり、将棋をさしたりした。すみ子が感づいた。妹分の加代をそそのかして清を誘惑させ、せめてもの腹いせにしようとした。清はまんまとその手にのった。やがて、加代と清の仲は、加代としても抜きさしならぬものになっていた。客の不入りや、吉之助が一座の有金をさらってドロンしたりして、駒十郎は一座を解散する以外には手がなくなった。衣裳を売り小道具を手放して僅かな金を手に入れると、駒十郎はそれを皆の足代に渡して一座と別れ、お芳の店へ足を運んだ。永年の役者稼業に見切りをつけ、この土地でお芳や清と地道に暮そうという気持があった。事情は変った。清が加代に誘われて家を出たまま、夜になりても帰って来ないというのだ。駅前の安宿で、加代と清は一夜を明かし、仲を認めてもらおうとお芳の店へ帰って来た。駒十郎は加代を殴った。清は加代をかばって駒十郎を突きとばした。お芳はたまりかねて駒十郎との関係を清に告げた。清は二階へ駆け上った。駒十郎はこれを見、もう一度旅へ出る決心がついた。夜もふけた駅の待合室、そこにはあてもなく取残されたすみ子がいた。すみ子は黙って駒十郎の傍に立って来た。所詮は離れられない二人だったようだ。

<レビュー>
傑作であることには間違いないが、
小津らしからぬ点がいくつもある。
これから、それについて語る前に、
ひとつだけ言っておきたいことがある。
最初に「傑作であることには間違いない」と言ったけれど、
小津の映画を「傑作」と言ってしまうのはどうも違和感がある。
傑作かどうかを論じる以前に、とにかく小津映画というのは変わっているのだ。
小津映画を観たことのない映画好きの人は、とにかくどれでも良いからみてみるとよい。
ゴダールが意図的に変態を着飾っているとしたら、
小津はナチュラルボーンな変態野郎だ。
小津に比べたら、ゴダールなんぞはただの中二病だと思うのだよ(ただしゴダールは偉大だ)。
言いたいことがわかるかい。
だから、傑作という以前に、小津映画は小津映画でしかないような気がする。
前置きは以上。

で、この作品の小津らしからぬ点について。
まず、色彩がやけに艶やかである。
小津が好きな人にはこれをうけつけない人もいるだろう。
色彩豊かであるが、悪く言えばギトギトしている。
これは撮影が宮川一夫であることが関係しているのかもしれない。
また、ストーリーが起伏にとんでいる。
小津といえば、話自体はいつも平凡なホームドラマなのだが、
今回は、ちょっとドラマチックだ。
キャラクターもいつも以上に人間的だ。
つまり腹黒いってことだ。
それから、キャストがいつもと違う。
これは松竹ではなく、大映で撮っているせいだ。
あの絶対的なレギュラーである笠智衆がカメオ出演にとどまっている。
突貫小僧はでていたかなあ。覚えていない。
杉村春子はちゃんとでていた。
あの人、妙に気に入らないのだ。
性格が悪そうで、なんだか腹が立つ。
でもそこがいいんだろう。
それから、小津の戦後のカラー作品といえば原節子だが、彼女は出演していない。
そのかわり、二人の大女優・若尾文子と京マチ子が出ている。
演技のことはよく分からないが、
京マチ子は目で演技できる女優だと思う。
素晴らしい。
それから、若尾文子は美しい。
非常に美しく、かわいらしい。
年をとってからの、黒川紀章との2ショットの印象が強いけれども、
若いころは大変な美人であったのだ。
実のところ、原節子はそんなに好みではない。
若尾文子のほうがずっと好きだ。
まあ、香川京子には敵わないのだが。
女優の話はさておき、
なんといっても違和感があるのは、
小津映画なのに登場人物が関西弁をしゃべるのだ。
だが面白いのは、登場人物がどんなアクセントでしゃべろうが、
結局は例の棒読みセリフ回しになるのだ。
恐るべし小津安二郎。

そのほか、特にいうことはない。
いくら異色だと言っても、三十分もすれば違和感はなくなり、
いつもの小津ワールドに浸れるのだ。
そもそも小津安二郎ほど異色の映画は無いと思っているので、
どっちにしろこれは「変な映画」なのだ。
だから結局、松竹で撮ろうが、
大映で撮ろうが、
宮川一夫が撮ろうが、小津映画はどこをどう切っても小津映画なのだ。
なんと素晴らしいことだろう。
偉大なるマンネリと言うべきか。
ある種、小津は映画界のラモーンズだね。
 
★★★★★

駿河シカヲ

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映画
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<駿河シカヲ>
夜中の12時から3時にかけて映画を観ることが多い。
近所を自転車で疾走している姿をよく目撃されている。

<マダム葵>
短期間でもの凄い本数の映画を観たりする。
夕方の花街でそそくさと歩く後姿を目撃されることがある。
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