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駿河シカヲとマダム葵による映画レビュー、書評、対談、コラム等のブログであります。 コメントやリンクはいつでも大歓迎でお待ちしております!
2025.05.14,Wed
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2009.04.09,Thu
駿河シカヲです。
最近明らかにレビューが適当になっているわけです。
この悪い流れはしばらく止められそうにありません。
なぜなら疲れているからです。
キム・ギドク監督の「春夏秋冬そして春」を観ました。
これはもう何回も観ています。たぶん全シーン覚えています。
ただ、好きであればあるほど、書くことがなくなってゆくのです。

<作品詳細・解説>
春夏秋冬そして春 - goo 映画

春-深い山あいの湖に浮かぶ寺で、老僧と幼い見習い僧が暮らしている。幼子はふといたずら心で、小さな動物の命を殺めてしまう…。夏-子どもは青年になっている。そこへ同年代の女性が養生のためにやって来て、寺に暮らすことに。青年の心に欲望、そして執着が生まれる。秋-寺を出た青年が十数年ぶりに帰ってくる。自分を裏切った妻への怒り。老僧は男を受け入れ、荒ぶる心を静めるようにさとす。冬-湖面を氷が覆う。壮年となった男の前に、赤子を背負った女が現れる。そして春…。

『魚と寝る女』『悪い男』など、それまでそのショッキングな内容で私たちを驚かせてきた韓国の異才、キム・ギドク。1年に1本というハイペースで作品を作り続け、近作はベルリンやベネチアなどの映画祭で受賞が続き、いま、世界でもっとも注目されている監督である。さて、この新作は今までの作品とは大きく作風を変え、詩情溢れる芸術作品になっており、今までのギドク・ファンは驚くだろう。

舞台は山中の湖に浮かぶ寺とその周辺だけ、登場人物も限られている。四季の移り変わりを人生になぞらえるため、撮影は1年に及んだ。ギドク監督自身も「冬」に登場する壮年の僧役で出演という熱の入れようだ。人は業のもとに生まれ、欲から執着が生じ、それが満たされないと憎しみや怒りが現れる。人は誰しも心の平安を求めてやまないが、それがかなうのはいつのことか…。心に沁みる作品だ。

<レビュー>
「サマリア」はキリスト教の映画であり、「春夏秋冬そして春」は仏教の映画である。
諸行無常、諸法無我、涅槃寂静、一切皆苦、有為転変、教外別伝、即心是仏、唯仏与仏、色即是空、一念三千、因陀羅網といった仏教的な四文字熟語を思い浮かべる、そんな映画である。
一見非常に美しい世界。
圧倒的な詩情が溢れている。
だが、バイオレンスな人間の本質を暴くキムギドクのことだから、それに加えて過剰な暴力性がにじみ出ていて面白い。

演出がいちいち上手い。
もうこれは北野武よりも安定感がある。
これは監督のどの作品にも言えることだが、シンボリックなエピソードと小ネタが非常に分かりやすく感動的なレベルで魅せてくれるので、変に頭の固そうな芸術映画にならない、高尚なテーマでも普通の面白い映画として楽しむことができる。
この辺の才能が現代の監督ではずば抜けていると思う。

舞台となる寺は湖上に浮かんでいる。
ボートで寺と俗世を行き来するわけだ。
映画にはしばしば「どこでもドア」的な媒介アイテムが重要なポイントになっている。
それは、道だったり、車だったり、ポストだったり、携帯電話だったり、橋だったり、手紙だったり、襖だったり、店だったりする。
今回はボートが象徴的な媒介アイテムとして登場する。
ボートに乗ってドラマを持った人が寺にやってきて、新たなドラマが作られる、ボートに乗って人が去り、残された人間のドラマが作られる。
主語と補語をつなぐbe動詞みたいにボートは湖を往来する。

やがて秋、和尚はボートに火をつけて死に、冬、ボートは和尚とともに凍った湖の中に消え、物語はいったんそこで消滅(中断)するかにみえるのだが、やがて誰もいなくなった寺にキムギドク本人扮する男がやってくる。
かつて和尚に育てられた男だ。
殺人を犯し、刑期を終えて帰ってきたのである。
春を迎え、雪解けとともに再び物語が始まる。
この世は続いてゆく。

その無常観がまさに仏教であり、ことによると暴力的で痛々しい。

★★★★★

駿河シカヲ

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ひたすらに映画
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映画
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<駿河シカヲ>
夜中の12時から3時にかけて映画を観ることが多い。
近所を自転車で疾走している姿をよく目撃されている。

<マダム葵>
短期間でもの凄い本数の映画を観たりする。
夕方の花街でそそくさと歩く後姿を目撃されることがある。
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