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駿河シカヲとマダム葵による映画レビュー、書評、対談、コラム等のブログであります。 コメントやリンクはいつでも大歓迎でお待ちしております!
2025.07.09,Wed
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2008.12.13,Sat
駿河のシカヲです。
長江哀歌(エレジー)を観ました。
ジャ・ジャンクーは素晴らしい。

<公式HP>
http://www.bitters.co.jp/choukou/

<作品解説・詳細>

長江哀歌 - goo 映画

三峡ダムの建設のため、水没していく運命にある町、奉節。そこへ船に乗って一人の男がやってくる。彼の名はハン・サンミン。16年前に別れた妻子を探しに、山西省からやってきた炭鉱夫だ。様変わりしてしまったこの町で、サンミンは働き口を見つけ、妻探しを続ける。一方、2年間音信不通の夫を探しに、やはり山西省からやってきた女がいた。

デビュー作から一貫して社会に取り残されていく人々を描いてきたジャ・ジャンクー監督。『クイーン』などの話題作を抑えてベネチア映画祭でグランプリを受賞したこの新作でも、その彼の眼差しは変わらない。日本最大の奥只見ダムの65倍という、世界最大のダムとなる中国・三峡ダム。この一大国家事業は、経済発展の面からすれば人々に大きな貢献をもたらす。しかしその流域に住む100万人以上の住民が移住を強いられているのだ。一方、水没を前に解体されていく町には地方から多くの出稼ぎ労働者が集まり、本作のようなドラマも生まれていく。大きく見れば経済発展はいいことだろう。しかし世の中は変化を望む人々ばかりではない。「発展」に乗れずに置き去りにされていく人々もいることを、ジャ・ジャンクー作品は私たちに気づかせてくれるのだ。

<レビュー>
この映画をドキュメンタリーとしてとらえても良いのかもしれない。
そう思っていながら観ていた中盤あたりで、事件は起こった。
奇妙なモニュメントがロケットのように飛んで行ったのだ。
しばらくあっけにとられていたが、すぐに気がついた。
これは、ドキュメンタリーではなく、映画なのだった。
あそこでおおがかりなフィクションを一発入れてしまう大胆さを何よりも評価したい。

それ以外にも記憶に残るシーンばかりだった。

人物の背景には、
長江の圧倒的な自然と、ダムに消えゆく瓦礫の街。
曇天と霧雨で青白い景色。
それだけでも観る甲斐があるのだが、
人物と風景の配置が見事に計算されている構図も完璧に近い。

街を解体する男たちはみな上半身裸である。
彼らは街を壊しながら、カンカンカンカンとリズムを刻んでいる。
町工場のプレス音が遠くでかすかに響いていた、あの頃の懐かしさに一瞬繋がって困った。

16年ぶりに、思ったよりそっけなく再会した夫婦。
対面で向かい合い、妻は夫に飴を手渡す。
邂逅の瞬間。
突然の遠い爆破音。
高層ビルが崩れ落ちてゆくのを二人が目撃する。
なんという素晴らしい画なのだろう。

★★★★★
                                                       by 駿河シカヲ
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HN:
駿河シカヲ & マダム葵
性別:
非公開
職業:
ひたすらに映画
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映画
自己紹介:
<駿河シカヲ>
夜中の12時から3時にかけて映画を観ることが多い。
近所を自転車で疾走している姿をよく目撃されている。

<マダム葵>
短期間でもの凄い本数の映画を観たりする。
夕方の花街でそそくさと歩く後姿を目撃されることがある。
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