押井守監督の渾身の力作「スカイ・クロラ」を観ました。
宮崎駿なんてくそくらえだって思っているのでしょうか。
愛憎入り混じったライバル関係なのでしょう。
<作品解説・詳細>
スカイ・クロラ The Sky Crawlers - goo 映画
ショーとしての戦争が行われる、仮初めの平和の時代。永遠に年をとらない「キルドレ」のユーイチは、新たに兎離州基地に配属となった。過去の記憶のない彼だが、初めて乗る機体も身体に馴染み、エースの座に着く。基地司令のスイトはそんなユーイチを複雑な眼差しで見つめていた。そんなある日同僚のパイロット、ユダガワが撃墜され死亡してしまう。墜とした相手は、「ティーチャー」となのる敵のエースパイロットだった……。
世界中のクリエイターからリスペクトを受ける押井守監督が撮りあげた鮮烈な物語。森博嗣の小説を原作に、「キルドレ」呼ばれる年をとらない若者たちが、戦闘機のパイロットとして戦いながら生きる意識を変化させていく姿を描く。澄み渡る蒼穹の中を時にあがき、時に愛を求めながら飛ぶキルドレの若者たちは、そのまま生きづらい現代社会で彷徨する現代の若者たちと重なっていく。キャラクターの心情は淡々と描かれる一方、空中戦のスピード感は圧巻。プロペラ機がまるで生き物のように縦横無尽にスクリーンを飛び交う。声優には菊地凛子や加瀬亮ら有名俳優たちをキャスティングし、独特の雰囲気を生み出した。
<レビュー>
年明けあたりに森博嗣を読もうと思って、図書館へ行き、適当に選んで「フラッタ・リンツ・ライフ」を借りたのである。
森博嗣のことをよく知らないぼくは、その時点ではまだその本がスカイクロラシリーズの一つであることを知らなかった。
帰ってさっそく読む。
実はそこまで期待していなかったのだが、予想外に面白く、ぼくはそれからしばらく、つい最近まで森博嗣のスカイクロラシリーズにハマっていたのだ。
シリーズ全巻読み終え、外伝の「スカイ・イクリプス」も読み、そしてようやく、満を持してDVD化された本作を鑑賞した、という流れなのであります。
全然かまわないレベルの話なのだが、原作と違う点はいくつかある。
結末が大きく異なるというのは、実はたいした話ではない。
読み終わった後、観終えた後、同じような種類のやりきれなさと切なさが残った。
つまり、どっちにしろ救いようがない話なのである。
原作との一番大きな違いは何か。
原作の空気感は絶妙に再現されているのだが、だんだん物語の主題が「父殺し」に巧妙に滑ってゆく点である。
「父」というのは、敵の会社のエースパイロットである「ティーチャー(原作ではティーチャ)」である。
ティーチャーは最強の絶対的なパイロットとして君臨している。
主人公のカンナミ・ユーイチ(原作ではユーヒチ)は、そのティーチャーに対して、最後に意を決して堂々と戦いを挑む。
その場面で押井守は主人公に「I'll kill my father!」という原作には無かったセリフを語らせる。
ここが押井守が新たに据えた独自の視点であり、若者に向けた(そして宮崎駿に向けた)強烈なメッセージになっていて、さらにそれが主題であるということを高らかに宣言したことで、物語が非常にクリアなものになっている。
原作では、「謎解き」という大きな側面がある。
キルドレって何?
いったい「僕」って誰なのか。クサナギ・スイト?クリタ・ジンロウ?カンナミ・ユーヒチ?
あれ、クサナギってもしかしてクリタであってカンナミでもあるのか?という疑問。
伏線がたくさん張りめぐらされていて、後々とんでもないトリックに気付いてゆくのである。
しかし、映画のほうでは謎解きのほうはカットされていて、逆に説明不足にも思えるけれども、二時間でいろんなものを詰め込みすぎるのはたいてい良い結果にならない。
原作の雰囲気はかなり近いところまで再現できている。
キルドレたちは、空の上ではイキイキしているのに、地上での生活はまるで死んだようだ。
ぼんやりしていて無個性。妙に無機質で特徴が無い登場人物の表情は巧い。
それから、やたら煙草を吸うところも再現されていて面白かった。
この時勢にあれだけ煙草ばかり吸うアニメは珍しい。
そして、一番見ものだったのはもちろん空中戦で、意外にもそのシーンは少なかったが、アニメの世界的な巨匠である押井守だけあって大変素晴らしく、興奮できた。
だがこれはどう考えても子供が楽しめるドラマでは無い。
おそらく僕らのような自傷の世代の、しかも落ちこぼれた人たちが観て、一番痛みを感じるのではないかという気がする。
いまいち自分の感想を伝え切れていないのが悔しいのだけれど、ぼくはかなり好きな映画です。
少なくとも、もののけ姫以降のジブリよりは百倍好きだな。
★★★★★
駿河シカヲ
夜中の12時から3時にかけて映画を観ることが多い。
近所を自転車で疾走している姿をよく目撃されている。
<マダム葵>
短期間でもの凄い本数の映画を観たりする。
夕方の花街でそそくさと歩く後姿を目撃されることがある。