これから飲み会です。
ちょっと気が重い。
鈴木清順「殺しの烙印」を観ました。
殿堂入りの大傑作です。
まだ観たことのない人は、あらすじ詳細は見ないほうがいいかも・・・。
<作品解説・あらすじ>
殺しの烙印(1967) - goo 映画
新人の具流八郎がシナリオを執筆し、「けんかえれじい」の鈴木清順が監督したアクションもの。撮影は「続東京流れ者 海は真赤な恋の色」の永塚一栄。
※あらすじの結末が記載されているので注意!
プロの殺し屋としてNO3にランクされている花田は、五百万円の報酬である組織の幹部を護送する途中、NO2とNO4らの一味に襲撃された。花田の相棒春日は倒れたが、組織の男の拳銃の腕前はすばらしいもので、危うく危機を脱した花田は、その男を無事目的地に送り届けた。仕事を終えたあとの花田は緊張感から解放されたためか、妻の真美と野獣のように抱き合うのだった。ある日、花田は薮原から殺しの依頼を受けた。しかも、四人を殺して欲しいというのだ。花田は自分の持つ最高のテクニックを用いて、次々と指名の人間を消していった。しかし、最後の一人である外人を殺すのに手間どり、結局失敗してしまった。殺し屋に失敗は許されない。組織は女殺し屋美沙子を差向けてきた。家に逃げ帰った花田に妻の真美が拳銃を向けた。真美も殺し屋だったのだ。九死に一生を得た花田は美沙子のアパートに転げこんだ。そんな花田を美沙子は射つことが出来なかった。その夜、二人は殺し屋の宿命におびえながらお互いを求めあった。やがて花田殺しに失敗した美沙子は組織に捕われ、彼女を救いに行った花田は組織の連中と対決したが、そこに現われたのは、かつて花田が護送した男大類だった。大類こそ、幻の殺し屋といわれるNO1なのだ。大類は対決の場所として後楽園ジムを指定した。花田は腕は大類の方が一枚上であることを悟り、捨身戦法で対決しようと覚悟した。それが効を奏し、大類は花田に倒されたが、花田も大類の一弾を受けていた。ジムの中によろめき立っている花田の前に美沙子が現われたが、すでにその見分けのつかない花田は彼女を射った。そして花田も、「NO1は誰だ!」と絶叫してその場に崩れ落ちていった。
この話の世界では、殺し屋にランキングがあって、主人公(NO.3)をはじめとする殺し屋たちは、NO.1を目指してしのぎを削っているのであります。
なんかもう爆笑ですね。
陳腐な設定と簡単なあらすじだけ見ると、完全にB級のフィルム・ノワールなのだが、これがもう凄いのです。
大傑作なのです。
凄すぎてぼくは観終えた後に、明日辞表を提出して殺し屋になろうかなあと思ってしまいましたよ。
常々思っているのですが、映画において大切なのは、「何を語るか」ではなく、「どう語るか」なのです。
これは黒沢清が言っていたことです。
ぼくはそれをさらに強く確信しましたよ。
話なんてある程度破綻していようが単純だろうが構わないのですね。
監督も役者も、与えられたプロットをどう料理するかというのが大事なのです。
この話も一見非常にアホなのですが、見せ方が凄いので、ちょっと泣けるのです。
鈴木清順監督はとにかくイメージの連鎖が洗練されています。
雨の女がシャワーをあびた女に切り替わる。これは水というイメージ。
炊飯器を抱きしめる男が、次のシーンで女を抱いている。非常に巧妙です。
なんというか邦画離れしたヴィジュアルなのですね。
もちろんこれにはファム・ファタール的存在の真理アンヌのエキゾチックな風貌が一役買っているという部分もあります。
それにしても、このイメージ連鎖の感覚的なセンスはゴダールをはじめとしたヌーヴェルヴァーグのセンスに引けをとらないぐらいに優れています。
鈴木監督はこのあと大正三部作を撮って、その素晴らしいセンスを芸術的な方向で昇華させるのですが、ぼくはむしろこういったエンターテイメント向きの作品に芸術的センスを盛り込んでゆく職業的な姿勢が好きです。
日本でこういった芸当ができるのは、やはり今のところ、さきほどあげた黒沢清ぐらいでしょう。
鈴木監督が「殺しの烙印」で見せた素晴らしい意匠が、日本の監督に受け継がれてゆくことを願っているのでありす。
ちなみに主人公の宍戸錠は、炊飯器の匂いがたまらなく好きという設定なのであります。
これがまた笑えるのです。
ことあるごとに、女に「飯、飯だ!飯を炊け!」と言うのですが、それが妙に生活感があって好きです。
そして、何と言っても主題歌の「殺しのブルース」が本当に素晴らしい!
笑えるうえにかっこいいのです。
歌詞だけ最後に載せておきます。
<殺しのブルース>
(一番)
男前の殺し屋は 香水の匂いがした
「でっかい指輪をはめているな」
「安かねえんだ」
「安心しろ そいつには当てねえよ」
まがったネクタイを気にして 死んだ
(二番)
寝ぼけ顔の殺し屋は 寒そうに震えてた
「女を抱いてきたのか」
「あたりきよ」
「湯たんぽを抱きな」
熱い鉛を抱いて 死んだ
★★★★★
夜中の12時から3時にかけて映画を観ることが多い。
近所を自転車で疾走している姿をよく目撃されている。
<マダム葵>
短期間でもの凄い本数の映画を観たりする。
夕方の花街でそそくさと歩く後姿を目撃されることがある。