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駿河シカヲとマダム葵による映画レビュー、書評、対談、コラム等のブログであります。 コメントやリンクはいつでも大歓迎でお待ちしております!
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2008.12.19,Fri
駿河シカヲである。
今回はフリッツ・ラングのハリウッドでの二作目「暗黒街の弾痕」を紹介。

<作品詳細・解説>
暗黒街の弾痕(1937) - goo 映画

ウォルター・ウェンジャー・プロのユナイテッド・アーチスツ傘下に於ける第一回作品で、「激怒(1936)」「丘の一本松」のシルヴィア・シドニーと「月は我が家」「丘の一本松」のヘンリー・フォンダとが主演する。脚本は「Gウーマン」「モダン騎士道」のジーン・タウンとグレアム・ベイカーが書き下ろし、「激怒(1936)」に次いでフリッツ・ラングが監督に当たった。助演の顔ぶれは「ギャングの家」のバートン・マクレーン、「鉄人対巨人」のジーン・ディクソン、「ロイドの牛乳屋」のウィリアム・ガーガン、「宝島(1934)」のチャールズ・チック・セールで、撮影は「結婚の贈物」「浪費者」のレオン・シャムロイが担当。

※結末まで書かれているので、ネタバレ注意!
恋人ジョーン(シルヴィア・シドニー)が涙を流して、官選弁護士スティーヴン・ウィットニー(バートン・マクレーン)が運動したお蔭で、前科三犯のエディは保釈出獄を許される。ドーラン神父(ウィリアム・ガーガン)に送られ自由の身となった彼は、ウィットニーの世話である運送会社のトラック運転手となる。ジョーンの姉ボニー(ジーン・ディクソン)は妹がエディと結婚することに反対し、彼女に恋をしているウィットニーと結婚するように勧めたが、ジョーンは即日エディと式を挙げる。前科者と蔑む世間の冷たい眼に苦しめられながらも、二人に幸せな日が続いていた。郊外に庭園つきの小住宅を月賦払いで買うことになり、そこへ引移った日、エディの雇主は遅刻を理由に、非情にも彼をクビにする。なんとか職を見つけようと狂人のように町をさまようエディだが、前科者の烙印がどこまでも前途を妨げた。その頃、毒ガスを用いて銀行を襲撃し、現金を積んだトラックを奪取した怪盗がいた。乗り捨てた自動車には、エディの頭文字の入った帽子が残されていた。直ちにエディ逮捕の網が張られる。エディはジョーンに帽子は盗まれたので身に覚えがないことを告白し、逃走しようとしたが、彼女は無実を証明するため自首を勧める。そこへ警官が現れて彼は捕縛され、裁判の結果死刑が宣告された。執行の当日、エディは囚人マグシイの助けを得て自ら負傷して病室に移された時、医師を人質に脱獄を計った。その時、銀行破りの真犯人がトラックもろとも河中に転落水死しているのが発見され、エディの釈放状が着いた。ドーラン神父は拳銃を構えたエディのもとへその知らせを持って近づくが、彼は官憲のトリックと思い、神父を射殺して逃走する。ウィットニーは、ジョーンに自分の車を提供して二人を逃がす。神父を殺した悔恨に悩みながら、二人の長い逃避行が続く。野に伏し山に寝て、その中にジョーンには赤ん坊が生まれた。秘かに子供をウィットニーとボニーに托した二人は、ようやく国境近くまでたどりつく。その時、警官隊に発見され、抱き合ったまま銃弾を浴びて崩れるように倒れるのだった。

<レビュー>
フリッツ・ラングのドイツ時代の作品を観たことがない。
本作はアメリカへ渡ったあとの作品であり、フィルムノワールの傑作と言われている。
主演はヘンリー・フォンダ。
前半はあまりアップで顔が映らず、どことなく地味で、むしろ彼のファムファタールであるシルヴィア・シドニーの快活な存在感にもっていかれている。
ところが、ヘンリー・フォンダが刑務所に入ったあたりの後半から、彼の表情が明らかに存在を主張し始め、顔のアップがバンバン決まってゆく。
面会のシーンで、ヘンリー・フォンダがシルヴィア・シドニーに「銃を持ってこい!」と言うメッセージを誰にも聞かれないように伝えるシーンの彼の表情は凄い。
このときに我々は男の狂気めいた何かを感じ取り、その後のデッドエンドをはやくも確信してしまうのである。
:
白黒映画における雨のシーンは、何故あんなにもビシビシと胸にくるのだろうか。
痛そうで、冷たそうで、やるせなく、時に美しい。
雨が感情を持っている。
カラー映画の雨のシーンにそれは無い。
いくらカラーで豪雨を降らせようが、それは白黒映画の小雨にも勝てないのである。
:
この作品は、あるべき姿のメロドラマであって、あるべきメロドラマの原型である。
男と女が愛し合い、運命に翻弄され、逃避行ののちに悲しい結末を迎える。
2000年代に生きる我々が、こうして70年前のメロドラマを観ている。
映画の歴史を横断しながら、思った。
映画というものは進化しえないもので、そのわりに普遍性を欠いている、だから死にそうでなかなか死なない文化なのだ、と。

★★★★★

                               駿河シカヲ

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駿河シカヲ & マダム葵
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ひたすらに映画
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映画
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<駿河シカヲ>
夜中の12時から3時にかけて映画を観ることが多い。
近所を自転車で疾走している姿をよく目撃されている。

<マダム葵>
短期間でもの凄い本数の映画を観たりする。
夕方の花街でそそくさと歩く後姿を目撃されることがある。
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